- 2020.12.22
養子縁組した場合の相続はどうなる?
血縁があるかどうかに関わらず、法律によって親子関係を結ぶのが養子縁組制度です。
特定の人に財産を相続させる場合や事業を継続させたい場合、
相続税の節税などに活用されることが多いです。
また、子どもに恵まれない夫婦と事故等で親を亡くした子どもなどをつなげて
養育環境を整えることができるなど様々なメリットがあります。
ただし養子縁組にはデメリットもありますので
実際に養子縁組を検討される場合は注意が必要です。
この記事では養子縁組の種類とメリット・デメリット、
相続の際に重要になるポイントをまとめていきます。
養子縁組は2種類ある
養子縁組とは、法律により血縁と同様の親子関係を生じさせる仕組みのこと。
普通養子と特別養子の2種類があります。
普通養子縁組
普通養子縁組は当事者である養親と養子の合意があれば基本的に成立します。
養親が成年であることや養子が養親の直系尊属または年長者でないことなど、
条件はありますがルール上の縛りは強くないので利用しやすい制度です。
独身でも養親になることができ、婚姻していれば未成年でも問題ありません。
普通養子縁組では実親との親子関係も継続するため、実親との関係で
扶養義務も相続権もなくなることはありません。
事業承継や相続税の節税などの目的で主に利用されるのは普通養子縁組です。
特別養子縁組
一方、特別養子縁組は家庭裁判所の審判によって成立するものです。
子どもの福祉・利益を目的に行われる養子縁組で、普通養子縁組よりも厳格な基準があります。
何らかの事情で実親が子どもを育てられない場合などの救済措置として利用されています。
特別養子縁組の条件は主に以下の通りです。
・原則として実親の同意を得ること、または「養子となる者の利益を著しく害する事由(貧困・虐待等)」があること
・養親になる人は婚姻済みの夫婦であること
・養親のいずれかが25歳以上、もう一方は成年であること
・養子が15歳未満であること(15歳未満から実質的に養親に養育されていた場合は18歳未満)
・6ヶ月間の試験養育期間を満了したこと
条件にある通りすぐに縁組ができるわけではなく、
6ヶ月間の試験養育期間が設けられています。
なお、養子の年齢については以前までは原則6歳未満とされていましたが、
法律の改正によって2020年4月から15歳未満に引き上げられました。
詳しくは厚生労働省や法務省のホームページをご確認ください。
→民法等の一部を改正する法律(特別養子関係)について(法務省)
養子も実子と等しく相続権を持つ
普通養子でも特別養子でも、実子と等しく相続権を持っています。
法定相続人(民法で定められた相続人)には順位があります。
・配偶者:常に相続人になる
・第一順位:被相続人の子
・第二順位:被相続人の親や祖父母
・第三順位:被相続人の兄弟姉妹
養子も法的に被相続人の子となるので第一順位に該当します。
相続できる順位が元々低かった人を養子にすることで第一順位に上げることもできますし、
元々は相続権がなかった人を養子にした場合も第一順位になります。
要するに養子になることで相続権を得られ、相続関係が変化するということです。
普通養子縁組と特別養子縁組でも養親からの相続については大きな違いはありません。
大きく異なるのは「実親からの相続権」についてです。
普通養子縁組は実親からの相続権を失いません。
実親との親子関係が消失するわけではないからです。
そのため普通養子縁組の場合は、養親と実親の両方を相続できます。
一方、特別養子縁組は養子と実親との法的な親子関係は消滅するので、
実親からの相続はできません。養親の財産のみ相続できます。
相続税節税の視点から見た養子縁組のメリットと注意点
前提として、養子は家や事業の存続や、子どもの保護などの社会的な意味を持っています。
その上で相続においても大きく2つのメリットがあります。
相続税の基礎控除額の拡大と、生命保険金・死亡退職金の非課税枠の拡大です。
・相続税の基礎控除額:3000万円+600万円×法定相続人数
・生命保険金・死亡退職金の非課税枠:500万円×法定相続人数
養子を迎えると法定相続人数が増えるので
枠がそれだけ増えることになります。
ただし、普通養子については被相続人に実子がいる場合は1人まで、
いない場合は2人までしかカウントされません。
一方で特別養子については家庭裁判所から許可を経ている関係であるため、
人数に縛りがなく、特別養子の数だけカウントされます。
また、法定相続人以外の人物に財産を残そうとすると
相続税が20%増になってしまうことがあります。
養子縁組をうまく活用することで通常の相続税率で相続できます。
基礎控除額や非課税枠も増えるため節税対策として有効な手段と言えます。
※税法上の制限はありますが、迎えられる養子の人数自体には制限はありません。
また、養子に相続させる際に実子とトラブルになる可能性があります。
養子の相続分は実子と対等なので、実子が納得できず揉めるケースが考えられます。
あらかじめ養親と養子、実子で話し合っておくか、遺言書を作成するなど対策しておきましょう。
養子縁組の解消は、簡単ではありません。
普通養子縁組の場合は、養親と養子の同意が必要で、
相手方が応じない場合は裁判所で離縁調停や離縁訴訟をすることになります。
縁組を解消したい重大な事由などがなければいけません。
特別養子縁組の場合は、当事者の同意では離縁できず、
普通養子縁組以上に離縁の条件が厳しく取り扱われます。
相続税対策として養子縁組を検討する際は、
相続に強い弁護士や司法書士などを交えて慎重に検討しましょう。
(東京司法書士会所属|登録番号:7237 認定番号:501362)
司法書士。相続案件、会社法務、債務整理、簡裁訴訟代理などを中心とした業務を担当。