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  • 2021.03.16
  • 代襲相続人とは?孫や甥・姪が相続人になるケース

代襲相続とは?

 

代襲相続(だいしゅうそうぞく)とは、
本来相続人になるはずの人が被相続人よりも前に死亡した場合などに、
その人の子が代わりに財産を引き継ぐことです。
孫やひ孫、甥や姪などが相続財産を引き継ぐことになります。

 

この時、代わりに相続人になった人のことを代襲相続人と呼びます。

 

この記事では代襲相続の基本知識をお伝えします。
代襲相続が発生した場合、少々相続手続きが煩雑になる場合があるので、
注意点も含めてお伝えしていきます。

 

代襲相続とは?

 

代襲相続とは、簡単に言うと亡くなった方の孫やひ孫、甥・姪などが代わりに相続することです。
よくあるパターンは「親より先に子どもが亡くなっているケース」です。

 

本来、親が亡くなると子に相続されるはずですが、
すでに亡くなっているので当然相続人にはなれません。
そのため、孫が代わりに相続することになります。

 

なぜ「代襲」相続と書くのか?

 

余談にはなりますが、
言葉の意味がわかると代襲相続の理解も早まる可能性もありますから、
ブレイクとしてご紹介します。

 

「代襲」という言葉に聞き慣れない方も多いのではないでしょうか。
襲という字は「おそう」とも読み、襲撃や強襲といった怖い印象もあります。
襲という文字は人に危害を加える意味だけではなく、
「先人のあとを引き継ぐ」という意味もあります。

 

古代中国では新しい皇帝が即位する際に、
先祖代々伝わる龍の衣を着た風習があったらしく、
これが襲という文字の語源になったと言われています。
引き継ぐという意味を持った似た言葉として「襲名」や「世襲」があります。


孫や甥・姪が両親の代わりに財産を引き継ぐので、代襲相続という言葉になります。

 

代襲相続人の範囲

 

本題に戻りましょう。
代襲相続人の範囲は大きく分けて2つあります。

 

・亡くなった被相続人の直系卑属(孫やひ孫)
・亡くなった被相続人の兄弟姉妹の子(甥や姪)

 

直系卑属の代襲相続は無制限に下ります。
子の代襲相続は孫、孫もすでに死亡している場合はひ孫と続きます。
一方で兄弟姉妹の子については甥・姪で止まります。

 

兄弟姉妹の代襲相続が一世代で制限されているのは、被相続人との関係が薄い傾向があり、
名ばかりの相続人が権利を主張できないようにしているからです。

 

※昭和56年1月1日以前に生じた相続については、
兄弟姉妹の子の直系卑属についても代襲相続人となります。
言い換えれば、甥姪以下の相続人まで、権利が無制限に下りていくということです(「再代襲」と呼びます。)。
相続手続きが、長い間放置されているような案件に出くわすと、
たまにこのようなケースにも遭遇します。

 

代襲相続が発生すると相続順位はどうなる?

 

民法で定められた法定相続人は、優先順位が設けられています。
相続放棄等がなければ以下の順位で相続されます。

 

配偶者:常に相続人になる
子:第1順位
直系尊属(父母・祖父母):第2順位
兄弟姉妹:第3順位

 

代襲相続は順位が変わらないので、
第1順位の子が孫やひ孫に、第3順位の兄弟姉妹が甥・姪に引き継がれます。
ちなみに第2順位の父母が亡くなっていて祖父母が存命の場合は祖父母に相続されますが、
この場合は代襲相続とは呼びません。

 

相続人が相続できる財産の割合


相続人が相続できる財産の割合(相続分)は、民法で定められています。
代襲相続でも基本的には同じ割合で相続します。


1.配偶者のみが相続人

 

配偶者は常に相続人になります。
配偶者以外に誰も相続人がいない場合は、配偶者がすべての遺産を相続します。

 

2.配偶者と子や孫などの第1順位

 

1/2を配偶者が受け継ぎ、残り1/2を子供が相続します。
子供が複数いる場合は、その1/2を子供たちで分けあうことになります。

配偶者がいなければ、子供(もしくは代襲者となる孫)が、全遺産を相続します。

 

3.配偶者と相続人の父母などの第2順位

 

子供や孫・ひ孫がいない場合は、第2順位の相続人が、遺産を取得します。
配偶者の相続分は2/3で、被相続人の父母や祖父母などの第2順位の相続人は、1/3です。
父母がどちらも存命の場合は、その1/3を父母で分け合います。
こちらも配偶者がいなければ第2順位の相続人が、全て引き継ぐことになります。

 

4.配偶者と相続人の兄弟姉妹の第3順位

 

子供や孫・ひ孫がおらず、父母や祖父母も亡くなっている場合は、兄弟姉妹や甥・姪が相続します。
配偶者と第3順位だと、配偶者の相続分は3/4、第3順位の相続分は1/4です。
複数人いる場合は1/4を人数分均等に分け合います。

 

養子の代襲相続は養子の子の出生時期によって異なる

 

養子縁組については、養子縁組をした日から法律上の親子関係が成立します。
そのため被相続人と養子との間では、実子と同じように相続が行われます。
ただし、養子から生まれた子については、出生時期によって代襲相続権の有無が異なります。

 

被相続人と養子が養子縁組をした後に生まれた子は、
法律上の孫ということになりますから代襲相続をすることができます。
一方で、
養子縁組をする前に生まれていた子(いわゆる連れ子)は、代襲相続はできません。
根拠は、古い判例です(大判昭和7年5月11日)。

 

相続放棄をした場合は代襲相続が発生しない

 

相続人は存命だが、相続できない(しない)というケースがあります。
典型的なケースは、以下3つです。

 

1.相続欠格:例えば、親の遺産欲しさに子供が親を殺害して刑に処せられた場合などです。子供は、親の相続人になれません。

2.相続廃除:遺留分を有する推定相続人(例えば、子供)が、被相続人(例えば親)に対して虐待などを行ったケースで、その被相続人(親)が家庭裁判所へ相続人(子)の相続廃除を請求した場合です。廃除された推定相続人は、相続人になれません。

3.相続放棄:相続人が、自ら裁判所に対して申述を行い、自ら相続人としての地位を放棄するケースです。

 

上記①(相続欠格)及び②(相続廃除)の場合は、代襲相続が生じます。
一方で、上記③(相続放棄)の場合は、代襲相続が生じません。
例えば、父が多額の負債を抱えており、自分が債務超過を理由に相続放棄をした場合、
自分の子供に相続権が移ることはありません。

 

相続人が増えトラブルに発展することも

 

代襲相続は、死亡などで相続できない人の代わりに、その人の子が相続するといった趣旨の制度です。
孫や甥・姪が相続人になるため、相続人の人数が増え、且つ疎遠な間柄となり、
遺産分割協議がまとまりにくくなる傾向があります。

 

代襲相続が予想される場合は、誰が相続人になるのかあらかじめ把握しておく必要があります。
ご自身だけでは解決が難しい場合は、相続に強い弁護士や司法書士などの
専門家に相談することも検討しましょう。