- 2020.10.10
離婚後の相続はどうなる?相続のプロが解説
離婚したら相続はどうなるのか?
気になる方も多いのではないでしょうか?
この記事では、離婚した後の相続に関する疑問を
解消していきたいと思います。
子どもがいた場合や再婚相手がいる場合など
様々なケースも併せてご紹介していきます。
離婚をすると法律上の相続関係が複雑になります。
当事者同士ではなかなか話しづらいテーマでもあるので
相続トラブルに発展しやすい問題でもあります。
頭ではわかっていても実行できるかは別ですから
不安な方は相続の専門家に相談してみてください。
目次
1.離婚後の配偶者(元夫・元妻)には相続権がない
離婚をしてしまうと夫婦関係が解消されるため、
財産を取得する権利は消滅します。
元夫・元妻が亡くなったとしても
すでに配偶者ではなくなっているので
その人の財産を相続することはできません。
逆に、自分が亡くなっても元配偶者に財産が渡ることはありません。
例外として、離婚後に同じ相手と再婚した場合は
相続権が得られることになります。
また、法律上の婚姻関係ではない「事実婚」は
配偶者としての相続権は一切付与されません。
一方で別居や離婚調停中であっても
婚姻関係が残っていれば配偶者相続権はあります。
「法律上の婚姻関係の有無」が
配偶者の相続権の分かれ目になるということです。
2.離婚前に子どもがいなかった場合
離婚をすると配偶者ではなくなるので
元配偶者の財産を相続する権利は発生しません。
子どもがいない場合は直系尊属(父母・祖父母)、
直系尊属もいない場合は兄弟姉妹に財産が引き継がれます。
相続人が誰もいない場合、
特別縁故者に引き継がれるケースがあります。
特別縁故者とは財産を引き継ぐ相続人以外の人で、
亡くなられた方の介護をしていた方や
内縁関係(生計同一の事実婚夫婦)などの特別な縁故があった方などに限られます。
財産を引き継ぎたい人が家庭裁判所に申請し、
認められた場合は相続されます。
なお、特別縁故者もいない場合は
国に収められることになります。
3.離婚後も子どもには相続権がある
離婚すると元配偶者の相続権は消滅しますが、
子どもとの親族関係は残ります。
親の婚姻の有無に関わらず、血縁関係(法定血族=養子も含む)であれば
子どもは両親の財産を相続する権利があります。
これは何十年も経った後でも変わりません。
たとえば被相続人Aと前妻Bとの間に生まれた子Cと、
現在の妻Dとの間に生まれた子Eがいた場合、
相続権が得られるのは現在の配偶者である妻Dと、
血縁関係にある子Cと子Eになります。
相続発生後に前配偶者との間に子どもがいることが発覚し、
遺産分割でトラブルになるケースは珍しくありません。
4.再婚相手の連れ子に相続させたい場合
血縁関係のない再婚相手の連れ子には相続権はありません。
上の例では妻Dと子Cは血縁関係がないため
妻Dが亡くなっても子Cには財産が引き継がれません。
では、再婚相手の連れ子に相続権を与えるためには、どのような方策があるのでしょうか。
養子縁組
生前に再婚相手の連れ子を養子縁組にすることで
被相続人と連れ子は法律上の親子とみなされ相続権が与えられます。
養子縁組の手続きは、被相続人または連れ子の本籍地、
あるいは届出人の住所地である市町村役場で
「養子縁組届」を提出して行うことができます。
婚姻届を提出して婚姻関係になるのと、手続き的に非常に似通っています。
遺贈
また、遺言書で、その旨を記載しておく方法もあります。
「遺贈」といって、相続関係のない者に対して、
遺産をプレゼントしてしまうという方法です。
※配偶者や実子の遺留分は保証されることになります。
極端な遺贈を行うと法的紛争に発展してしまうケースもありますので、
法律家や税理士に相談するなど、慎重に進めていただく必要があります。
【番外編】養子と相続税の基礎控除について
相続税を計算する際、遺産から
「3000万円+法定相続人の数×600万円」が
無条件で控除されます。基礎控除といわれるもので、
相続税の計算は、ここからスタートすると言えます。
「養子をたくさん増やしたら、基礎控除が増えて節税効果があるのではないか?」
と考える方もいらっしゃるかと思いますが、そう簡単にはいかないものです。
民法上、養子の人数に制限はありません。
何人でも養子縁組が可能です。
一方、相続税を計算する際に、養子を基礎控除算定に関する法定相続人に含めるか否か、
人数に制限が設けられています。
・被相続人に実子がいる場合:1人
・被相続人に実子がいない場合:2人
ただし「連れ子を養子にした場合」は、基礎控除の算定については
実の子供として取り扱われるので、法定相続人に算入することができます。
この場合、相続税基礎控除の枠が拡がりますので、節税効果になるメリットもあります。
まとめ
離婚後の相続は、相続トラブルになりやすいと言えます。
特に以下のようなケースです。
- 前配偶者との間にも、現在の配偶者との間にも子供がいるケース。
- 配偶者に連れ子がいるが、養子縁組をしていないケース
できる限りトラブルを回避するには、生前対策が不可欠です。
やはり、遺言や生前贈与等をもって、相続発生前に
遺産の分け方について決めておくことが重要です。
連絡が取れる場合は、事前に相続の内容を伝えたうえで、
了承を得ておくということでもよいと考えます。
ご自身の相続関係を振り返ったうえで、
「相続でもめてしまいそうだなあ」と懸念される方は、
無理をせずに弁護士や司法書士などの相続の専門家にご相談ください。
(東京司法書士会所属|登録番号:7237 認定番号:501362)
司法書士。相続案件、会社法務、債務整理、簡裁訴訟代理などを中心とした業務を担当。