- 2020.12.12
エンディングノートとは?遺言書との違いと記入例
「終活」を意識するとエンディングノートという単語を耳にするようになります。
言葉のニュアンスから遺言のようなものだと思っている人は多いと思います。
自由な形式で書けるエンディングノートですが、
実は遺言書とは明確な違いがあります。
違いがわかっていないとせっかく書いたものが無駄になってしまうだけでなく、
残された家族にも迷惑がかかってしまう恐れがあります。
この記事ではエンディングノートの概要と、
遺言書との違い、記入方法についてお伝えします。
正しい知識を持ち、自分の意思をしっかり引き継げるようにしていきましょう。
目次
1.エンディングノートとは?
エンディングノートは、人生の終末を迎えるにあたり、
残される家族に自分の思いを伝える記録です。
書き方や形式も自由で、生前から渡しても構いません。
資産のこと、お墓や葬儀に関すること、
もし病気になった場合の延命治療についてなど
いざという時にしてほしい対応を書くことが一般的です。
最近だとスマホやパソコンのID・パスワードを記載することもあるようです。
遺言書も作成する場合は遺言書の保管場所を記載することもあります。
もちろん家族への感謝の気持ちを記しておいても良いです。
エンディングノートは市販されている普通のノートでもOK。
エンディングノート用のノートも売られているので、
それにそって書き進めた方がスムーズかもしれません。
直筆である必要もないので、
パソコンやスマホで書いても構いません。
とにかく書きたいことを自由に書いて良いのがエンディングノートです。
2.エンディングノートと遺言書の違いは?
エンディングノートと遺言書は似ているようで明確な違いがあります。
法的効力の有無
一番の大きな違いは法的効力の有無です。
遺言書は被相続人の財産処分について法的効力のある書類です。
公正証書遺言以外の形式の遺言書で、封がされている場合は、
勝手に開封することはできません。
家庭裁判所での検認時に、相続人全員が揃っている状態で開封できます。
一方、エンディングノートは法的効力はないので、
何を書いても構いませんが、
財産などが確実に相続される保証はありません。
記載できる範囲
また、記載できる範囲も異なります。
遺言書は「死後」に関することのみで、
延命治療や介護などの「生前」に関する内容は記載できません。
遺言書は作成方法や記載内容はルールがあり、
民法に決められている様式を守らなければ、法的効力も失われてしまいます。
エンディングノートはそういった縛りはありません。
費用
エンディングノートと遺言書では費用も異なります。
エンディングノートは数百円程度。
遺言書はすべて自分で書く「自筆証書遺言」であれば安く済みますが、
ミスがあると無効になってしまいますし、自己管理では紛失や改ざんの恐れがあります。
安全性と確実性を考えると
公証人に作成・保管してもらう「公正証書遺言」が賢明です。
無効になることはなく、保管してもらえるのでリスクも軽減されます。
ただし数万円~数十万円の費用が発生します。
着手金、作成費用や手数料に関しては各事情によって異なるので
依頼する前に複数の事務所から見積もりを取るようにしましょう。
遺産が相続人同士で取り合いになりそうな場合や、
特定の相続人に確実に事業承継したい場合、
相続人に未成年や判断能力が衰えた方がいる場合など
遺産相続に不安があるのであれば遺言書もあわせて残しておきましょう。
3.エンディングノートに何を書くか?
エンディングノートはルールがありませんので、
基本的には何を書いても構いません。
とはいえ真っ白なノートにいきなり書き出すのも難しいので
記載すると良い項目をあげておきます。
以前、ある方のエンディングノートを拝見したことがあります。
不動産登記事項証明書、証券会社からの通知、保険証券や通帳の表紙をコピーし、
クリアファイルにまとめていらっしゃいました。
クリアファイルであれば、後々解約・売却したら、ファイルから抜くことができます。
新たに取得すれば、新たに資料をファイルに入れればよいので便利であるとのことでした。
ファイルの場所は近しい親族に伝えてあるとのことでした。
ご自身で、管理しやすい方法を模索するとよいと思います。
自分の基本情報
生年月日
本籍地
血液型
マイナンバー
運転免許証番号・健康保険証番号
趣味
特技
好きな食べ物
財産や資産について
預貯金(口座情報など)
金庫やタンスなどに保管している現金
保険
不動産
有価証券
貴金属や骨董品などの価値あるコレクション
借金(ある場合は正直に)
個人情報
契約しているサービス
ID
パスワード
退会手続きの方法
医療、介護について
延命治療
臓器提供
介護
費用の捻出方法
持病
アレルギー
常用薬
葬儀、お墓について
信仰している宗教
葬儀の方法(家族葬など希望するもの)
納骨の方法・場所
お墓の管理について
遺影に使う写真(何枚か用意すると良いかもしれません)
ペットについて
ペットの名前
性格
好き嫌い
病歴
かかりつけの病院
相続、遺言書について
相続財産の整理
相続についての考え方
遺言書の有無と保管場所
連絡先
親族や友人の名前や住所、連絡先
家族へのメッセージ
もちろんここでご紹介した項目はあくまで例です。
他にも書いておきたいことがあれば書いて構いません。
形式も自由なので思いついた時に書き足していくこともできます。
難しく考えず、気軽に書いていきましょう。
エンディングノートを書き終えたら、
信頼できる親族に保管場所を伝えておくか、
少し探せば見つかるような場所に保管しておきましょう。
まとめ
エンディングノートはできる項目から書いていけば大丈夫です。
加筆修正も気軽にできるので定期的に見直すことも大切です。
ただし、先述しましたが法的効力はありませんから
家族間のトラブルを未然に防ぎたい場合は、
遺言書もあわせて作成しておくようにしましょう。
亡くなった後では自分の意思や気持ちを伝えられなくなります。
また、何気なくエンディングノートを作成するうちに、
これからの人生を頑張るキッカケになることもあります。
実際、数年前、ある保険会社の紹介で、
エンディングノート作成セミナーに参加したことがあります。
自分の死や死後のことを想像することで、現在、自分にとっての価値は何なのか、
自身のアイデンティティはどこにあるのか、改めて考えるきっかけとなりました。
「死」を考えることで、現在の「生」を振り返るという有意義な時間でした。
エンディングノートを作成してみると、あらためて、
遺言書に何を書くべきかを考え直すことができると思います。
未来を明るく生きるためにも、今までの人生を振り返って
ノートに残してみてはいかがでしょうか?
(東京司法書士会所属|登録番号:7237 認定番号:501362)
司法書士。相続案件、会社法務、債務整理、簡裁訴訟代理などを中心とした業務を担当。