- 2020.03.14
必ず遺言書を作成しておきたい5つのケースとは?
遺産をめぐる相続争いはできる限り避けたいもの。
被相続人が生前に遺言書を作成しておけば、
遺産を的確かつスムーズに渡せるようになります。
自分の意思を具体的に示しておき、
「どの財産を誰に、どのくらい渡すか」
を指定しておくことが重要です。
特に、これから挙げる5つのような事情のある被相続人は、
必ず遺言書を作成しておきたいところです。
目次
事業引き継ぎなど、法定相続分と異なる割合で遺産を与えたい人がいる場合
同族会社(いわゆる家族経営)の経営者、個人事業者、農業経営者などで、
自分が死んだ後でも事業を引き継いでもらうために、
法定相続分と異なる割合で遺産を与えたい人がいる場合は
遺言書にそれを指定しておくことが重要です。
また、渡したい人が娘婿である場合など、
法定相続人に該当しない人に引き継がせたい場合は、
特に遺言書の作成が必須になります(遺贈)。
内縁関係のパートナーやその子供に財産を分け与えたい場合
ここで言う「内縁関係」とは、正式に婚姻届けを出していない間柄を意味します。
共に生活し、苦労をかけたパートナーに財産を分け与えたい場合は、
遺言書にその旨を指定しておく必要があります。
もし内縁の男女の間に未認知の子どもがいる場合、
その子は、内縁の妻の戸籍にのみ名前が記載されます。
内縁の夫と子供は、戸籍上、まったくの他人として扱われます。
このようなケースの場合、子を夫の相続人とするためには、
内縁の夫から「認知」という手続きを踏む必要があります。
何らかの事情で、認知できない事情があった場合でも、
内縁の夫は、自分の死後、遺言の中で認知することで
その子を、自身の法定相続人の1人に加えることができます。
ただし、認知したことを戸籍に記すためには、管轄の市区町村への届け出が必要です。
遺言書の中に必ず遺言執行者を指定しておき、
スムーズに相続を進められるようにしておきましょう。
※嫡出子:法律上の婚姻関係にある男女から生まれた子のことです。
婚姻関係にない男女の間に生まれた子を、非嫡出子と言います。
非嫡出子は、母親の戸籍に自動的に入るため、
父親の子供として扱われないという制度なのです。
平成25年の民法改正まで、非嫡出子の相続分は、嫡出子の半分とされてきました。
現在は法改正により、このような格差は是正されています。
法定相続人ではないが、分け与えたい人がいる場合
よくあるのが「長男の嫁」やお世話になった人に渡したいケースです。
自分の子の配偶者は法定相続人ではありませんから、
遺言書でそれを指定しておくことで渡せるようになります。
しっかり指定しておかないと
自分たちと長く同居してくれた長男の嫁には渡されず、
長男の兄弟姉妹に渡されることになり、トラブルになる可能性があります。
この点、法改正により特別寄与制度が新設されましたが、
いわゆる「長男の嫁」が相続人ではないということに変わりありません。
ただし、法定相続人以外の人に相続する場合、
相続税が2割加算されることとなり、相続税が高くなります。
法定相続人ではないため、基礎控除の適用もありません。
生前贈与で少しずつ分け与えた方が良いケースもありますから
生前から対策しておくようにしましょう。
公共機関や公益法人などに寄付をしたい場合
後世へ残すべき財産(絵画等の文化財)をお持ちの方や、
自らの財産を社会の役に立てたいといった場合など、
遺言書を作成することで、自分の財産を寄付することが可能です。
内容も専門的ですから、弁護士等の専門家へ事前に依頼する必要もあるでしょう。
注意しておきたいこととしては、寄付先をしっかり吟味する必要があること、
推定相続人がいる場合、その残された人たちへの
遺留分(法律上取得することが保証されている最低限の取り分)も考慮することです。
寄付する相手方に事前に同意を得る必要はありませんが、
不動産や動産の場合だと寄付を拒否されてしまう可能性があります。
こうしたものを譲り渡したい場合は相手方と事前に相談しておき、
確実に遺言が実現できるようにしておきましょう。
法定相続人であるが、財産を渡したくない人がいる場合
1.兄弟姉妹に対して
とてもシンプルです。
単に、遺言書をもって、遺産を与えたくない兄弟姉妹に、
何も残さなければよいだけの話です。
兄弟姉妹には、遺留分の権利がありませんから、
単に何も残さなければ、それで終わりです。
2.親や子に対して
親や子が、自身の相続人に該当するものの、
虐待を受けた等の深刻な事情により、財産を分け与えたくない場合もあるでしょう。
親や子が相続人に当たる場合、彼(女)らには、遺留分の権利があります。
遺言書で「何も与えない」としたとしても、概ね相続分の半分は、民法上保証されます。
単に遺言で相続分をなくしてしまうというだけでは、効力が薄いといわざるをえません。
このような場合、生前の申立てや遺言をもって、
特定の推定相続人を、相続人から外してしまう制度もあります。
これを相続廃除と言います。
しかし、これが法的効力を持つためには
家庭裁判所に相続廃除の申立てを行い、それが認められなければいけません。
ただし、生前でも遺言でも
相続廃除が認められたケースは多くありません。
制度自体もあまり利用されておらず、機能不全な状態ともいえます。
ケースバイケースですが、生前贈与等の利用が、より即効性が高いとも言えます。
なお、遺言により死後に相続廃除の手続きを行う場合は、
手続きの代行者として、遺言執行者の選定が必須ですのでご注意ください。
まとめ
決してあなた1人で抱え込まないでください。
遺言書の作成は慎重に行うべきものです。
自分自身の望みを適切に叶えていくためには
司法書士・弁護士・税理士などの
信頼できる専門家に相談することが大切です。
場合によっては、贈与税を加味しても、生前贈与などの別の方法を取った方が
スムーズに財産を分け与えられることもあります。
法律や税務のプロに意見を求めることをオススメします。
当事務所では無料相談を受け付けていますので
ぜひお気軽にご相談ください。
(東京司法書士会所属|登録番号:7237 認定番号:501362)
司法書士。相続案件、会社法務、債務整理、簡裁訴訟代理などを中心とした業務を担当。