- 2020.12.13
遺産分割調停とは?かかる期間や費用等を解説
遺産分割協議がうまくまとまらなかった場合、
家庭裁判所での遺産分割調停に移っていきます。
自分たちで話し合っても折り合いがつかないのであれば、
遺産分割調停も視野に入れなければいけません。
この記事では遺産分割調停に移る場合の具体的な流れと、
目安の費用やかかる時間などをご紹介します。
もちろん、こうなる前に話し合いで決められることが理想です。
もしご家族だけではうまく進まないのであれば、
一度、司法書士や弁護士など相続に強い専門家に相談してください。
やるべきことがクリアになるだけでも支えになるはずです。
※家事事件は、「最初に調停を行うこと(調停前置主義)」が原則です。
しかし、調停の前提となる事実(誰が相続人なのか。遺産の範囲はどこまでか。)
について、そもそも合意に至らないこともあります。
協議する前提について争いごとがある場合は、
最初から訴訟手続きになるケースもあります。
また、このような状況でも、あえて調停に付して一挙に解決させることもあります。
ケースごとに様々な態様があります。
1.遺産分割調停とは?
遺産分割調停とは、当事者だけでは協議の収拾がつかなくなった場合に
利用できる裁判所の手続きです。
家庭裁判所の裁判官1名と調停委員(2名)が当事者の間に入って意見を聞き、調整し、
互いに合意できるまで話し合う手続きです。
調停はあくまで話し合いで解決する手続きですので、
遺産分割方法を強制されるわけではありません。
全員が合意するまで話し合っていきます。
原告・被告2者に分かれて議論を闘わせ、裁判官が間に立っているような、
ドラマで見るような裁判とは異なります。
当事者はそれぞれ異なる待合室で待機し、
呼ばれたら部屋に入り調停委員と話をします。
こちらの話が終わったら部屋に戻り、今度は相手が部屋に入ります。
これを何度も繰り返して話を進めていきます。
相続人同士が直接顔を合わせることがないので、
冷静に話を進められるようになります。
調停委員は、経験豊富な民間の有識者(弁護士など、法律関係者も多い)が就任します。
裁判官もついていますので、法的に妥当な解決を促しやすくなります。
ですから、当事者が法律を理解している必要もありません。
調停委員のアドバイスを受けながら
公正な識見に基づいて話し合いを進めていくことができます。
2.遺産分割調停はどれくらいの期間がかかる?
遺産分割調停は通常1回では成立しないので複数回開催されることになります。
調停期日が開かれるのが平日の日中(10時から17時ごろ)で、
開催ペースは月1回程度です。
うまく話し合いが進んで合意できれば早くて3ヶ月程度。
長くなると1年以上続いてしまうこともあります。
遺産分割調停は全員の合意がなければ成立しないため、
納得できない当事者がひとりでもいれば、合意できるまで話し合いが続くことになります。
100%自分の意見が通るわけではなく、譲り合いも必要です。
合意を得て調停が成立すると、2、3日後に自宅あてに調停調書が届きます。
調停調書の内容にそって相続を行うことになります。
相続人同士で合意に至らない場合、調停が不成立になることがあります。
そうすると自動的に審判手続へ移行し、裁判所の判断で結論(審判)が下されます。
審判は、家庭裁判所の裁判官が、両当事者の話を聞き、
妥当な結論を一方的に決定する制度です。
当然、審判に不服がある場合は、異議を申し立てて、
更に上の裁判所(高等裁判所)へやり直しを求めることができます
(「即時抗告」といいます。)。
3.遺産分割調停にかかる費用は?
遺産分割調停の手続き自体にかかる費用はそれほど高くはありません。
遺産分割調停に最低限必要な費用は以下の通りです。
・収入印紙1,200円分
・連絡用郵便切手
・戸籍謄本など必要書類の発行手数料
・裁判所への交通費
これらの費用は、あくまでご自身で全ての手続きを行った場合の実費です。
家庭裁判所に何度も通うことになりますし、当然書面も作成する時間と手間がかかります。
ご自身が動いた時間も実質的に費用が掛かっていることになりことも忘れてはいけません。
時間節約のため、また適切なアドバイスをもらうためには、
専門家へ依頼することも重要です。
当然ですが、専門家へ依頼すると、その報酬がかかってきます。
報酬額は、事案内容や事務所の報酬体系によって大きく異なります。
依頼する司法書士・弁護士に事前に確認をしてください。
4.専門家へ依頼する場合
家庭裁判所に関連する書類作成や訴訟代理の案件ですので、
依頼内容によって、司法書士または弁護士に相談することとなるのが一般的でしょう。
家庭裁判所へ提出する申立書の作成を依頼したい場合は、
司法書士または弁護士に依頼することとなります。
話し合いの際に訴訟代理人を立てたい場合は、弁護士に依頼することとなります。
司法書士は、裁判所に提出する書類(申立書や準備書面)の
作成について受任することができます。
実際に調停での話し合いや相手方との折衝は、ご自身で行うこととなります。
ご自身にある程度時間的余裕があり、十分に手続きの対応ができるケースや、
対立の着地点がある程度見えているようなケースならば、
司法書士に相談するとよいかもしれません。
一方、弁護士に訴訟代理人を依頼する場合は、事情が異なります。
弁護士は、調停に直接出廷できますし、折衝の矢面に立って、
本人の代わりに交渉を一手に引き受けてくれます。
反論や主張をする際の書面作成も一手に引き受けます。
感情的な事情などから、自信が矢面に立ちたくない場合もあるでしょう。
ご自身は出席したくないし、関係者とも直接やり取りしたくないが、
遺産分割の内容には意見したいということもあるでしょう。
このような場合は、弁護士に訴訟代理を依頼し、手続きを代行してもらうとよいでしょう。
弁護士の仕事量や業務可能範囲は、司法書士に比べると広いですので、
費用も当然高額になってきます。
専門家に依頼する場合の費用は、前述の通り、
事案内容や事務所報酬体系によっても異なります。
お近くにある複数の事務所から見積もりを取ってみてもよいかもしれません。
ただ、費用の金額も大切ですが、重要なことは専門家との相性です。
「信頼できる」「話をよく聞いてくれる」と感じる専門家に依頼することが大切です。
5.遺産分割調停を申し立てられたら?
遺産分割調停を申し立てられ、呼出状が届いたら、
極力その日に出頭するようにしましょう。
事情があってどうしても出席できない場合、
裁判所に連絡を取り出席できない旨を伝えてください。
無視したりせず、きちんと対応すれば欠席しても不利益はありません。
理由もなく出席しなかった場合、
「5万円以下の過料」の制裁を科される恐れがあります。
そのまま欠席を続けると調停が不成立となり、
審判になって遺産分割方法が決定されてしまう可能性があります。
審判は、裁判官が一刀両断で結論を導くものです。
ご自身が納得できない結果となる可能性も、十分考えられます。
調整の期日呼び出し状が届いた場合は、
連絡がつく(意見対立がない)他の相続人とも相談の上、
裁判所に出頭して手続きを進めていくようにしましょう。
まとめ
遺産分割調停は時間も費用も、手間もかかる手続きです。
できればこうなる前に遺産分割協議で合意できるよう、
スムーズに相続手続きが進められるのが理想です。
相続が開始したのち、「揉めそうな要素があるなあ」と感じる場合は、
”争族”になってしまう前に、専門家に相談しましょう。
話し合うべき論点を、明確にすることができます。
たとえば、前妻・後妻にそれぞれ子供がいるケースや、
被相続人が資産家で不動産などを多く所有しているようなケースが典型的といえます。
早い段階から専門家の力を借りることで結果的に
トータルコスト(時間・お金)を抑えることができます。
家族間の亀裂が大きくなる前に、ぜひ司法書士や弁護士に相談することをオススメします。
(東京司法書士会所属|登録番号:7237 認定番号:501362)
司法書士。相続案件、会社法務、債務整理、簡裁訴訟代理などを中心とした業務を担当。