- 2020.02.26
【3分でわかる】残された配偶者を守る配偶者居住権とは?
2020年4月1日から、「配偶者居住権」が新設されます。
故人の配偶者に「配偶者居住権」が認められて、
所有権を持たなくても自宅に住み続けられるようになります。
これにより改正前でたびたび起きていたトラブルが回避され、
配偶者の権利と生活を保護できるようになります。
この記事では配偶者居住権が新設されることになった背景から、
配偶者居住権の概要とメリットについてお話していきます。
目次
配偶者居住権は、配偶者が自宅に住み続けられる権利!
簡単にかみくだいて説明すると、配偶者居住権とは
夫が(妻が)亡くなった後も、妻が(夫が)
ずっと住んでいた自宅に住み続けられる権利です。
長く住んできた我が家ですから
残された配偶者がそのまま住んでも良さそうなものですが
これまでの制度では住みたくても住めない事情が発生していました。
住み慣れたマイホームから追い出される可能性があった
たとえば、被相続人(亡くなった人)が
2000万円の自宅と2000万円の預金を持っていたとします。
2000万円の自宅には配偶者である妻も住んでいて、
ひとり息子は独立して別の場所に住んでいます。
これで相続が発生した場合、
法定相続分(法律で決められた分け方)だと
妻と息子に半分ずつ相続されることになります。
この例だと遺産の合計が4000万円なので、2000万円ずつです。
そして妻が自宅に住み続けたい場合は
妻は2000万円の自宅のみを受け取り、
息子が2000万円の預金をもらうことになります。
こうなると妻は建物しか相続できず、現預金を取得できません。
これでは、妻は、今後の生活が苦しくなる可能性が出てきます。
最悪の場合、愛着のある自宅を売却して
新しい住まいを見つけなければいけなくなります。
本来なら遺産の分け方は
妻と息子の合意があれば自由に決めることができるので
このようなトラブルになる心配はありません。
しかし、これまでの制度では
折り合いがつかないとこうした事態が起こり得たのでした。
配偶者が自宅に住み続けながら、十分な財産を受け取れる!
遺産分割などで、配偶者居住権を取得すると、
自宅の評価額(相続する遺産の額)を「配偶者居住権」と
「配偶者居住権の負担付き所有権」に分けて考えることができます。
先ほどの例だと、2000万円の自宅について
1000万円の配偶者居住権、1000万円の負担付き所有権のように
自宅の権利を分離して評価することができます。
配偶者居住権は妻に、
負担付き所有権は息子に相続する遺産分割協議を行ったとします。
法定相続分は2000万円ずつでしたから
妻が1000万円の配偶者居住権と1000万円の預金を取得し、
息子が1000万円の負担付き所有権と1000万円の預金を取得する内容と
定めることができます。
配偶者居住権を取得しておけば
妻がもらえる預金がゼロから1000万円にアップします。
これだけあればその後の生活も安心です。
【注意点】
①相続開始時に、相続人である配偶者が、実際に「居住」していないと、利用できません。
②相続開始時に、居住建物が、配偶者以外の者と共有状態である場合は、利用できません。
(例)自宅が、夫(持分1/2)、長男(持分1/2)の共有である場合、夫が死亡し、夫の持分全てを妻が相続したケース。長男は、家族とは言え「配偶者以外の者」ですので、本制度を利用できなくなってしまいます。二世帯住宅など、権利関係によって、注意が必要かもしれません。
③配偶者居住権の評価方法は、複雑です。税理士等の専門家に相談する必要があります。上記事例は、制度を理解しやすくするため簡略化しておりますので、ご留意ください。
施行は2020年4月1日から!登記もお忘れなく
配偶者居住権は、
残された配偶者が安心して暮らせるようにするための、
配偶者にだけ与えられる特別な権利です。
配偶者居住権を含む改正民法の施行は、2020年4月1日からになります。
遺言書については4月1日以降に作成する遺言書から
配偶者居住権を記載できるようになります。
また、配偶者居住権を取得したら、
その内容を登記しましょう。
登記をしないと、配偶者居住権を、第三者に主張できません。
自宅を売却されてしまった場合、新しい買主に対して、
配偶者居住権を主張できなくなってしまいます。
この記事では【3分でわかる】と題しましたので
大まかな内容をかみくだいて説明してきました。
配偶者が、長く住んできた家に住み続けることができ、
十分な生活費ももらえるようになる権利だとご理解いただければOKです。
配偶者居住権は、高齢化社会の現代に適した制度です。
配偶者居住権のことや、登記や遺言書の書き方など
詳しく知りたい方、検討されている方は
相続に詳しい司法書士・税理士・弁護士に相談しましょう。
(東京司法書士会所属|登録番号:7237 認定番号:501362)
司法書士。相続案件、会社法務、債務整理、簡裁訴訟代理などを中心とした業務を担当。