- 2024.01.15
【ペットと相続について】飼い主が亡くなったらどうする?
現代の新たな問題の1つに、
「ペット」の問題があります。
・飼い主が亡くなったら、ペットはどうなるのか?
・残されるペットにどのような対策ができるのか?
ペットを大切な家族の一員と感じている方も多いでしょうから、
相続発生前後にできるペットの対応についてお話していきます。
目次
ペットの法律上の扱いについて
日本の法律では、ペットは「モノ」として扱われます。
人以外の動物はすべて「モノ」です。
そのため他の財産と同様に
誰にどのように譲るか?を考えておき
入念に当事者間で話し合っておく必要があります。
モノ扱いなので、ペットには相続財産を残せない
アメリカでは、飼い犬に財産を相続させた例があるようですが、
日本では、ペットに対して遺産を相続させることはできません。
遺言書へ「ペットに相続させる」という内容を記載しても、
その遺言は法律上の効果を持ちません。
自分の口座にペット用の食費や病院代などを貯めていたとしても
相続発生時には、子、親、兄弟姉妹などの家族(法定相続人)に相続され、
遺産分割の対象となります。
ペットに直接財産を譲ることはできませんが
ペットを引き取ってくれる「人」に対しては
条件をつけて相続させたり、贈与することができます。
これを応用することで、飼い主亡き後も、ペットの生活を
生涯にわたって保証する仕組みを作ることができます。
当社は、一般社団法人日本ペットトラスト協会より、
「ペット相続士」の資格を認定された司法書士が在籍しています。
公益団体NPO法人ピーサポネットと協力し、
ラブポチ信託®を用いた方法をご提案することができます。
まずは、前提として、負担付贈与または負担付死因贈与について説明し、
その後ラブポチ信託®についてご説明差し上げたいと思います。
※ラブポチ信託®:公益団体NPO法人ピーサポネットが展開する、
飼い主亡き後のペットライフを守る、先進的な取り組みです。
1.負担付遺贈
負担付遺贈は、ある条件を付けて
遺言で特定の人に財産を、一方的に譲り渡す行為です。
ペットを誰かに託したい場合は、
「ペットを育ててくれる人に、
飼育に必要な財産を譲ります。」
という旨を遺言書に書きます。
・誰に何を譲るのか
・どのように世話をするのか
・遺言執行者を誰にするのか
を明記しておくと良いでしょう。
遺言執行者を指定しておくことで
遺贈する財産の承継をスムーズに進めることができます。
ただし、負担付遺贈は、遺贈を受けた側(受贈者)に放棄されてしまうリスクがあります。
一方的に飼い主が押し付ける形となるため、事前に知らされていない場合は、
受贈者にとっては、寝耳に水です。
受贈者が、遺贈放棄をした場合は、ペットの世話を託すことはできません。
新しい飼い主としっかり話し合えるのであれば
次に紹介する「負担付死因贈与」の契約を結んでおくことが無難かもしれません。
2.負担付死因贈与
負担付死因贈与は、贈与する人が亡くなった場合に、
ある条件で特定の人に財産を贈与するものです。
内容は負担付遺贈と似ていますが、大きく違うのは
負担付死因贈与は、前の飼い主と新しい飼い主で
双方の合意(契約)が必要であるという点です。
遺贈は、遺言によって、遺産を、ある人にプレゼントするという
一方通行の行為(単独行為)です。
他方、贈与は、当事者間の合意に基づく契約行為であるということです。
前の飼い主と新しい飼い主との間で決める契約ですので、
合意が成立しているなら新しい飼い主に拒否される心配はありません。
お互いの合意があれば口頭でも一応契約にはなりますが、
口約束では「言った言わない」で揉める原因にもなりますから
確実に引き受けてもらいたいなら書面で契約しましょう。
贈与契約書では負担付遺贈の場合と同様に
・誰に何を贈与するのか
・どのように飼育するのか
これらを具体的に書いておきます。
また、自身の死後に贈与がきちんと行われるか心配であれば、
死因贈与執行者を決めて、財産の承継を託すこともできます。
3.ペット相続士に相談し、ラブポチ信託®を利用する。
上記、遺贈や死因贈与の方式を用いる場合、
引受人を探すことが困難であるという現実に直面します。
そこで、これを解決する新しい方法が考えられています。
資格認定されたペット相続士を介して、
認定NPO法人ピーサポネットを軸とした、
「ラブポチ信託®」の仕組みを利用する方法です。
※NPO法人(特定非営利活動法人)とは、公益的活動を行うことを目的に設立され、
公的機関(市区町村等)から認可を受けて設立される非営利団体です。
上記法人は、営利を目的とせず、ペットの殺処分問題をなくし、
ペットとのよりよい共生を目指して活動する団体です。
↓「ラブポチ信託®」についてはこちらの動画をご覧ください。↓
① 生命保険契約を用いた方法
飼い主様に生命保険へご加入いただき、受取人として提携先の信託銀行等をご指定いただきます。
飼い主様の死後、ペットは上記NPO法人が引き取ります(死因贈与による所有権移転)。
当該信託銀行等が、生命保険金を上記NPOへ支払います。
併せて、上記NPOは、信頼できる団体にペットを預け、
生命保険金を原資に、生涯にわたるペットの生活をサポートするという仕組です。
② 遺言による負担付き遺贈を用いた方法
健康上の理由等で、生命保険契約が利用できないケースです。
事前に遺言書と契約書を作成します。死亡を契機として、
ペットの所有権をNPOへ移します(死因贈与による所有権移転)。
また、事前に作成した遺言書により、一定の遺産も併せて上記NPOへ遺贈することで、
上記①と同じような仕組みを実現します。ペットの生活費相当額を負担付遺贈により
NPO法人へ預け、生涯にわたる生活費を確保します。あとは、上記①のとおりです。
上記手続きについて、もっと知りたいという方は、上記NPO法人または、
最寄りのペット相続士にご相談いただく必要があります。
まとめ
「もしも」の時があった場合の
ペットへの対応の仕方について紹介しました。
ペットとの生活は、高齢者の健康維持や飼い主自身への癒しなど、
近年、そのプラス効果が注目されています。
しかし、特に高齢者の方は、ご自身に万が一のことがあった場合を考えると、
なかなかペットとの共生に踏み出せない現実があります。
ぜひ上記専門機関に相談いただき、積極的に将来をみすえた
ペットライフを考えていくことをご提案いたします。
(東京司法書士会所属|登録番号:7237 認定番号:501362)
司法書士。相続案件、会社法務、債務整理、簡裁訴訟代理などを中心とした業務を担当。