- 2020.12.11
銀行預金を相続する際の注意点と必要書類
亡くなった人の遺産整理をしていると自ずと問題になってくるのが銀行預金です。
当然ですが亡くなったからといって遺族が勝手に預金を引き出せるわけではなく、
預金の相続手続きが必要になります。
この記事では被相続人の銀行口座を相続する方法と必要書類等を解説します。
ここではあくまで基本的な流れをお伝えしますので、
細かい手順はご利用の銀行にお問い合わせください。
1.銀行預金の相続手続きの流れ
銀行口座を相続する手続きは以下の流れです。
1.被相続人(亡くなった人)が取引していた銀行を確認する
2.必要書類を準備する
3.必要書類を提出する
4.払い戻し等の手続き(手続き完了)
夫婦であれば取引していた銀行の把握は問題なくできるでしょう。
銀行に相続発生の連絡をしたらその後の対応について案内されるはずです。
また、複数の銀行口座をお持ちの場合は
金融機関ごとに手続きする必要があります。
被相続人の銀行口座は、相続発生の連絡をした時点で凍結します。
入出金できなくなるので振込や料金の引き落としなどもストップします。
以前までは手続き完了後でなければ預金を引き出せませんでしたが、
令和元年(2019年)7月1日に民法改正されたことで、
一定金額を凍結口座から引き出せるようになりました。
生活費や葬儀の費用などを被相続人の預金から出せるようになっています。
相続が完了すると、預金の名義が相続人に変更されます。
相続後は解約しても構いませんし、そのまま継続しても問題ありません。
2.名義変更に必要な書類
銀行預金を相続するためには、名義変更のための書類が必要です。
銀行に問い合わせても案内されると思いますが、基本的に提出する書類はこちらです。
・被相続人の出生から死亡までの戸籍謄本
※金融機関・証券会社において「法定相続情報一覧図」で戸籍を代用できる場合があります。
・相続人全員の戸籍謄本および印鑑証明
・被相続人名義の通帳やキャッシュカード
・遺言書や遺産分割協議書
・預金名義変更依頼書
戸籍謄本と印鑑証明については市区町村の役所で取得できます。
必要書類は遺言書や遺産分割協議書の内容次第で変わる場合があります。
遺贈のケース、兄弟姉妹で相続するケース、
遺言書で遺言執行者が選任されているケースなどです。
預金名義変更依頼書は銀行が用意している書類で、
オンラインでダウンロードするか郵送で取得できます。
なお、具体的な手順は各金融機関によって異なります。
銀行にあらかじめ確認してから準備しましょう。
3.被相続人の口座から預貯金がすぐに引き出せるように
従来は遺産分割協議が終わるまで預金を引き出せませんでしたが、
2019年7月1日の民法改正により遺産分割協議を待たなくても、
金融機関の所定の手続きを行うことで、一部の預貯金を引き出せるようになりました。
引き出せる限度額は
口座の預貯金額×法定相続分×1/3
あるいは150万円
と決められています。
この限度額は1つの金融機関ごとの上限なので、
複数の銀行口座がある場合は出金可能金額が増える可能性があります。
葬儀代や遺産分割協議までの生活費などを賄うことができます。
4.銀行預金を放置しておくとどうなる?
相続による銀行口座の名義変更に関しては、特に期日は設けられていません。
預金を名義変更せずに放置すると、口座は引き続き凍結されます。
国や金融機関に送られることはなく、相続人が罰則を受けることもありません。
10年以上使われていない口座は休眠口座となります。
お金は預金保険機構に一時的に保管され、民間公益活動などに活用されます。
休眠口座に入ってからでも相続手続きを行えば預金を引き出すことは可能です。
ただし、相続税の申告・納付期限が
相続開始を知った日(通常は、死亡日)の翌日から10ヶ月以内、
相続放棄の期限が相続開始を知ってから3ヶ月以内となっているため、
預金や借金を含めて、遺産の調査は早めに進めていく必要があります。
被相続人が残した財産をしっかり把握するためにも、
気がついた段階で忘れないうちに手続きをしていきましょう。
また、一部の銀行では口座維持手数料を導入しており、
使っていない口座でも費用が発生する場合があります。
今後使う予定がない口座は早めに解約しておきましょう。
口座を放置していると、他の相続人に勝手に使われてしまう恐れがあります。
不当な使い込みをされてしまうと他の相続人の取り分が減る可能性がありますし、
何より家族間で訴訟トラブルにまで発展する恐れがあります。
面倒だからと放置しておくともっと面倒な事態になりかねませんので、
ぜひ早めに行動することをオススメします。
まとめ
銀行口座の相続の第一歩は「銀行に連絡すること」です。
まずは連絡をとって凍結の処理をしてもらい、
預金が勝手に使われないようにしましょう。
先述したように凍結しても一定額までは引き出せるので、
その後の生活に不安がある方もご安心ください。
実際は不動産などの他の遺産相続の手続きと
同じタイミングで相続される方が多いです。
手間はかかりますが確実に進めていきましょう。
とはいえ、預金の名義変更手続きは慣れない人にとっては煩雑なものです。
仕事の合間を縫って手続きをするのも難しい場合があるでしょう。
もし手続きに不安がある、時間に追われて手続きを進められないのであれば、
司法書士や弁護士など、相続に強い専門家に相談してみることをオススメします。
ぜひこの記事を参考に、相続手続きを進めてみてください。
(東京司法書士会所属|登録番号:7237 認定番号:501362)
司法書士。相続案件、会社法務、債務整理、簡裁訴訟代理などを中心とした業務を担当。