- 2020.07.24
農地を相続する時の流れと注意点
農地は相続財産に含まれます。
農業が盛んな栃木県では農地を相続する例は多いです。
ただし農地は宅地とは異なる制度があるため注意が必要です。
売却したくても宅地のように簡単にはいきません。
そこでこの記事では農地を相続する際の流れと注意点を
わかりやすくご紹介していきます。
目次
農地を相続するには2つの届け出が必要
農地を相続したら「法務局での相続手続き(登記名義の変更)」と
「農業委員会への相続手続き(農地相続の届出)」の2つの手続きが必要です。
特に農業委員会への届け出は10ヶ月以内と期限が決められています。
10ヶ月を過ぎると10万円以下の過料を科される場合があるため、
早めに手続きを済ませましょう。
農業委員会では農地管理に関する相談や農地の借り手探しなどの支援を受けられるので、
相続人が遠方に住んでいる場合や、農業を継ぐ意思がない場合などは
農業委員会に早めに相談しましょう。
農地の評価方法
農地も資産の一種ですから、その価額がどれくらいなのかという評価が必要です。
しかし、農地は宅地などと比べて評価方法が複雑です。
自力で計算しようとすると誤ってしまう可能性があるので
農地の専門家や税理士、不動産鑑定士等に相談することをおすすめします。
農地の評価方法は農地の種類によって異なります。
純農地・中間農地:倍率方式
市街地周辺農地:それが市街地農地であると評価した金額の80%
市街地農地:宅地比準方式または倍率方式
農地の評価額と他の遺産の合計が基礎控除額を上回る場合は相続税が発生します。
基礎控除額は「3000万円+600万円×法定相続人」で求められる額です。
※各地の評価倍率は国税庁の「評価倍率表」からも確認できます。
農地を相続したくない場合
農業を継ぐつもりがなく農地を相続したくない場合、
次のような方法が考えられます。
1.農地として売却・賃貸
2.農地以外の用途に転用
3.相続放棄
4.最低限の管理をして放置(非推奨)
1.農地として売却・賃貸
農地としてそのまま売却・賃貸できるのであれば、
農地の管理も楽になりますし、売却代金・賃料を得られます。
ただし売却は農業委員会の許可が必要です。
また農地は一定条件を満たした農家にしか売れないので、
買い手を見つけるのは簡単なことではありません。
買い手や借り手を探す際は農業委員会に相談するのが賢明です。
確実に売却・賃貸できるかしっかり調査しておきましょう。
2.農地以外の用途に転用
農地として売却・賃貸するのが難しい場合、
宅地などに転用して活用・売却できる可能性があります。
農地のまま処理するより活用しやすくなります。
ただし、一定要件を満たした農地のみ可能です。
相続する農地が転用できるかどうかは
しっかり農業委員会に相談し確認しておきましょう。
3.相続放棄
売却・転用が難しいとなると、次に考えられるのは相続放棄です。
しかしこちらも厄介で、相続放棄をすると
農地だけでなく自宅や預貯金などすべての相続財産を
放棄してしまうことになります。
しっかり損得を計算して検討しなければなりません。
相続放棄手続きは「相続発生を知ってから3ヶ月以内」です。
迷っているうちに期限を過ぎてしまうことのないよう、
手続きをするのであれば急いで進めましょう。
なお、相続には順位があります。
被相続人の家族構成によりますが、相続放棄によって
他の親族(次順位相続人)が相続人となってしまうことがあります。
例えば、被相続人の子(第1順位)と両親(第2順位)が、順次相続放棄すると、
兄弟姉妹(第3順位)が相続人となる取り扱いです。
相続関係をよく確認の上、専門家にご相談の上、手続きをしていくことを推奨いたします。
4.最低限の管理をして放置(非推奨)
転用の条件を満たさず売却や相続放棄もできないとなると、
最低限の管理をして放置するしかありません。
雑草の除去や害虫駆除が必要になりますし、
放置していても固定資産税はかかります。
このようなことにならないように
早めに農業委員会や相続の専門家に相談しましょう。
まとめ
農地の相続は手間がかかります。
農地の売却・転用などの手続きには、
農地法に基づき許可を取る必要があります。
これは農地を勝手に活用されてしまうと
国の食料自給率が下がってしまい、食料の安定供給に
支障をきたす恐れがあるからです。
そのため、できれば農地は農地のまま使うように
制度が考えられています。
生前から地元の農業委員会や農地相続に詳しい専門家に相談するなどして
相続をスムーズに進められるようにしておきましょう。
当事務所は東京都池袋と栃木県宇都宮市に事務所を構えており、
宇都宮事務所では土地柄、農地が関連した相続の相談も多く受けております。
東京都内で面談し、栃木県内の土地建物の相続登記手続きが可能です。
ご相談がございましたら、当社までご連絡下さい。
(東京司法書士会所属|登録番号:7237 認定番号:501362)
司法書士。相続案件、会社法務、債務整理、簡裁訴訟代理などを中心とした業務を担当。