- 2020.04.01
相続放棄手続きでやるべきこと。必要書類・期限もご紹介
相続は不動産などの資産だけではなく、
借金などの負債も引き継ぐことになります。
「被相続人(亡くなった人)の借金を肩代わりしたくない!」
という場合は、相続を放棄することができます。
ただし、相続放棄は、必ず家庭裁判所で手続きを行う必要があります。
また、自分のために相続の開始があったことを知った時から3ヶ月以内に、
裁判所で手続きする必要があります。
正式な手順を踏んで、きちんと手続きをしなければなりません。
・相続放棄した方が良いのか迷っている方
・ご家族から相続放棄を勧められている方
上記の方は特によく読んでいただき、
判断基準の1つにしていただければと思います。
目次
相続放棄の期限は相続発生から3ヶ月以内
先述しましたが、相続放棄にはタイムリミットがあります。
相続放棄の手続きは相続が発生したことを知ってから
3ヶ月以内に家庭裁判所に申し出る必要があります。
通常は被相続人の死亡日と同じになることが多いので、
死亡日から3ヶ月以内と覚えておくと良いでしょう。
この期間内に遺産と借金の金額を調査します。
また、相続放棄するならば必要書類を集め、申述書を作成しなければなりません。
ですから、3ヶ月は決して長くありません。
面倒でも後回しにせず、できる限り
すばやく進めていくようにしましょう。
・遺産と借金の調査が自分では難しい場合
・仕事などで忙しく時間が取れない場合
・後悔しないよう確実に手続きをしたい場合
こうした場合は無理せず
相続に強い弁護士や司法書士の力を借りましょう。
相続放棄のメリット・デメリット
相続放棄手続きが裁判所に受理されますと、
相続人は、その相続について「初めから相続人とはならなかった」
という取り扱いになります。
「相続人ではない」という扱いですので、
プラスの財産もマイナスの財産も、
一切引き継がないということになります。
<相続放棄のメリット>
・負の遺産(借金・連帯保証人としての立場など)を、一切引き継がなくてよくなります。
・遺産分割協議でもめているケースなど、相続人同士の争いを避けることができます。
<相続放棄のデメリット>
・財産調査が不十分だった場合、プラスの財産を相続できずに損をする可能性があります。
・相続放棄をしたからといって借金そのものが無くなるわけではありません。
他の相続人が、その借金をより多く肩代わりをする結果となることにも注意しましょう。
相続放棄した方が良いケースの例
相続放棄をした方が良いケースをご紹介します。
次のようなケースに該当する方は
相続放棄を検討された方が良いでしょう。
・財産よりも借金が多いことが明らかである
・故人が誰かの連帯保証人になっていた
・事業承継などのため特定の人に財産を集中させたい
・遺産の額が少なく、遺産相続のトラブルを避けたい
・被相続人や他の相続人と疎遠のため関わりたくない
相続放棄の判断が難しい場合は限定承認制度
財産と借金のどちらの方が多いのか判断が難しい場合は
限定承認制度を利用することができます。
限定承認制度を利用するとプラスの財産の範囲内で
マイナスの財産を引き継げるようになります。
損をできる限り抑えられるということです。
ただし、限定承認制度については、共同相続人全員から裁判所へ申立する必要があります。
また、手続きが煩雑になるため、
相続に詳しい専門家に依頼する必要があります。
相続放棄と比べると費用もかかるため、
相続放棄か限定承認かの判断は慎重に行うべきです。
相続放棄の必要書類
1.相続放棄申述書
2.亡くなった方の住民票除票、戸籍の附票
3.亡くなった方の戸籍謄本(※)
4.相続放棄する方の戸籍謄本
5.郵便切手
6.収入印紙(800円)
※兄弟姉妹から相続する場合は、必要となる戸籍が増えますのでご注意ください。
相続放棄申述書は家庭裁判所に直接足を運んでいただいても入手できますし、
一般的な雛形は家庭裁判所のホームページからダウンロードできます。
申述書の記載内容は、それほど複雑かつ専門的ではありません。
時間的余裕があり、シンプルなケースであれば、ご自身で必要事項を記入して、
家庭裁判所に提出することもできるでしょう。
相続放棄手続きの流れ
必要書類を集めたら、家庭裁判所に申述をします。
家庭裁判所であればどこでも良いわけではありません。
相続放棄をする家庭裁判所は、亡くなった方の
最後の住所地を管轄する家庭裁判所になります。
提出する家庭裁判所がどこになるのか知りたい方は
裁判所のホームページでチェックしてください。
1.相続放棄申述書に必要事項を記入、捺印する
2.家庭裁判所に申述書と必要書類等を提出する
3.裁判所からの照会書に回答し、返送する
4.(問題がなければ)相続放棄が受理され、「相続放棄申述受理通知書」が届く
照会書は「亡くなった方の死亡をいつ知ったか?」
「なぜ相続放棄をしたいか?」などを回答する
アンケートのようなものです。
正直に回答すれば問題ありません。
前述のとおり、申述書自体は、シンプルなものです。
ご自身で手続きすることも、困難ではありません。
しかし、債務が多大であるケースなど、手続きを確実に進めていきたい場合は、
弁護士・司法書士といった専門家に書類作成をご相談されるのが無難です。
手続きの中で何らかの不備があれば
相続放棄の期限を過ぎてしまう恐れもありますし、
一度却下されれば二度と相続放棄はできません。
すべてご自身で相続放棄手続きを進めるのが不安であれば、
相続放棄に詳しい専門家に相談いただくとよいでしょう。
相続放棄の期限を過ぎてしまったら?
原則は3ヶ月以内という期限を過ぎてしまうと、
相続放棄をすることはできなくなります。
もちろん放棄する気がなければ問題ありません。
財産調査がスムーズに進んでいない場合など
やむを得ない事情で3ヶ月の期限を過ぎてしまいそうであれば
家庭裁判所に「相続放棄のための申述期間伸長の申立」を行いましょう。
相続放棄の期限の後になって借金が見つかっても
余程の事情がなければ相続放棄を行うことは非常に難しいので
相続に強い弁護士や司法書士のサポートを受けて
スムーズに財産調査を済ませるようにしましょう。
まとめ
相続放棄の期限である「相続を知ってから3ヶ月以内」は意外と短いものです。
大切な人が亡くなられた直後は慌ただしくなりますし、
ご家族も動揺するでしょうから
すぐに相続の話を持ち出すのは難しいかもしれません。
不動産の評価や財産調査にも時間がかかります。
相続放棄手続きを確実に済ませたい方は、
相続に強い弁護士や司法書士に相談し、
余裕を持って手続きを進めていくことをおすすめします。
(東京司法書士会所属|登録番号:7237 認定番号:501362)
司法書士。相続案件、会社法務、債務整理、簡裁訴訟代理などを中心とした業務を担当。