- 2020.04.24
作成は簡単!相続関係説明図について
相続に関する名義変更の手続きをしていると、金融機関や証券会社から、
戸籍や住民票と併せて、相続関係説明図の提出を求められることがあります。
今回は、相続関係説明図についてお話ししたいと思います。
1.どこで必要となるのか
おおよそ、以下のような機関で求められることが多いです。
①金融機関(銀行・証券会社等)
→被相続人(亡くなった方)の口座の解約時。
②税務署
→相続税の申告時。
③法務局
→相続に関連した、土地建物などの登記名義の変更時。
2.なぜ相続関係説明図が必要なのか
「相続関係説明図」とは、
被相続人と相続人の関係性を分かりやすく図式化したものです。
要は、家系図のようなものだと思っていただくと、理解しやすいと思います。
戸籍謄本などの書類で関係性を証明していきますが、
これをいくら集めても、パッと見て相続関係はわかりません。
戸籍だけ提出されても、理解するのに時間がかかりますので、
一覧図を作成することで、誰が相続人かをひと目で分かるようにするのです。
3.書式は?
確定した書式はありません。
当然、手書きで作成しても、何ら問題はありません。
金融機関によっては、独自の書式があり、
それに記載して提出するようにと要請されることがあります。
以下、5.では、
弊社が法務局へ相続登記手続きを行う際に提出する書式を
参考にご説明していきます。
4.作成に必要な書類は?
作成の前提として、以下のような書類を集めることが一般的です。
①被相続人(亡くなった方)の、出生から死亡までの戸籍すべて
→これを集めるのが、かなり厄介です。
時間も費用もかかります。
戸籍は、本籍地を管轄する市区町村で取得します。
これが、あたりまえのようでいて、案外面倒なのです。
本籍地は住所と必ずしも一致しません。
そもそも、本籍地を失念していらっしゃる方も多いのではないでしょうか。
また、通常、出生から死亡まで本籍地が動かないということはほとんどありません。
結婚、離婚、養子縁組などにとどまらず、
住所を移すと本籍地を移すという方もいらっしゃいます。
また、古い戸籍(明治・大正時代など)は、文字が達筆過ぎて読めない場合も多いです。
②相続人の現在戸籍
遺産相続する可能性のある相続人(推定相続人)の現在の戸籍を集めます。
これは、現在、生きているかどうかを確認する趣旨です。
③被相続人の住民票の除票や、相続人の住民票
→法務局で手続きする際など、求められる場合もあります。
上記、書面の有効期限は、金融機関ごとに異なります。
手続き時には、事前に確認して下さい。
これが、案外重要です。せっかく集めても、
「古いからダメです。」といわれることも多々あります。
また、戸籍が大量のため、集めているうちに、
最初に取った戸籍の有効期限が切れてしまうということもあります。
このようなケースの場合は、各提出先に事前に相談してみてください。
柔軟に対応してくださることがありますので。
5.相続関係説明図の記載例
弊社が、法務局へ相続登記を申請する際に提出する相続関係説明図をご覧ください。
実際に登記で使用したものを加工しています。
どのような情報を掲載するかは、司法書士によっても多少異なります。
掲載事例は、比較的スタンダードな形式であると思います。
①被相続人の表示(A)
出生日と死亡日を記載します。
本籍や死亡時の住所は、表題の下あたりに大きめに記載しています。
登記手続きの際は、登記事項証明書に記載されている被相続人の住所地と、
死亡時の住所が異なることがあります。
このような場合、その住所変遷を証明するため、
住民票や戸籍の附票(戸籍に付随して住所変遷を証明する証明書)を添付します。
②相続人の表示(CとD)
出生日や続柄を記載します。
また、遺産分割協議の結果、遺産を相続する方は、
かっこ書きで(相続)と記載し、
遺産を相続しない方については(分割)と記載しています。
弊社では、住所も記載していますが、これは任意です。
このような相続関係説明図は、依頼者へ登記識別情報(いわゆる権利証)や
登記事項証明書をお引渡しする際に参考資料として戸籍と併せてご案内しております。
ですので、住所なども記載し、
依頼者により分かりやすい書面となるよう心掛けて作成しております。
③相続と無関係な記載(B)
これは、離婚した配偶者の記載などです。
関係性をより分かりやすくするため、あえて記載する場合があります。
なお、これを記載するか否かは、司法書士によっても異なります。
以前は、相続人ではありませんので書かずに作成していたこともありました。
しかし、某法務局から記載した方がわかりやすいと指導を受けました。
どうも、管轄法務局によっても、取り扱いが異なるようです。
まとめ
簡単ですが、相続関係説明図について解説してまいりました。
相続関係説明図は、各機関から作成を求められることがあります。
ご自身で作成することもできます。
しかし、戸籍の取得をはじめ、専門知識が必要とされる面が多々あります。
特に古い相続関係を調査するのは、なかなか骨の折れる作業です。
内容の難易度により、専門家にご相談される必要もあるかと思います。
※ ところで、2017年から「法定相続情報一覧図」という
あたらしい制度がスタートしています。
これは、相続関係説明図に法務局が証明を付加したような書面です。
これについては、また、別の機会にお話ししたいと思います。
(東京司法書士会所属|登録番号:7237 認定番号:501362)
司法書士。相続案件、会社法務、債務整理、簡裁訴訟代理などを中心とした業務を担当。