- 2020.12.21
相続放棄申述書とは?相続放棄手続きに必要な書類と注意点
相続放棄とは、文字通り相続をすべて放棄することです。
不動産や現金などのプラスの財産も、借金などのマイナスの財産も
すべて放棄することになります。
借金を相続したくない場合や、その相続に関わりたくない場合、
特定の相続人に財産を集中させたい場合などに利用されます。
相続放棄の手続きをする際には「相続放棄申述書」などの必要な書類があります。
また、相続放棄には自己のために相続開始があったことを知った時から3ヶ月以内という
期限があるため、早めに対策する必要があります。
ここでは相続放棄手続きに必要な書類と、手続きに関する注意点について
わかりやすくお伝えしていきます。
相続放棄手続きに必要な書類
まずは申述手続きに必要な書類を用意しましょう。
・相続放棄申述書
・相続放棄する人の戸籍謄本
・被相続人の死亡の記載のある戸籍謄本
・被相続人の住民票の除票または戸籍の附票
・収入印紙(800円)
・切手(500円以内(裁判所管轄により異なります。))
孫、親や兄弟姉妹などが相続放棄する場合は上記以外の戸籍謄本も必要になります。
「あなたの場合」は何が必要か、裁判所等で確認するようにしましょう。
相続放棄申述書(そうぞくほうきしんじゅつしょ)は、
相続放棄の手続きに必要な書類です。いわゆる「申請書」のようなものです。
相続放棄する人の基本的な情報として
名前や住所、被相続人との続柄や遺産の内容、
放棄したい理由などを記入し、押印して提出します。
必要事項を記入する程度ですのでそれほど難しい書類ではありません。
相続放棄申述書は最寄りの家庭裁判所で入手できる他、
家庭裁判所のホームページからもダウンロードできます。
なお、相続人が20歳未満の場合は自分で相続放棄することができません。
代わりに法定相続人が作成することになります。
また、未成年者と法定相続人の利益が反する場合は、
特別代理人の選任を裁判所へ申立てる必要があります。
書類を提出すると、裁判所から「照会書」が届く
申述書類を提出してしばらくすると、
家庭裁判所から「照会書」や「回答書」が送られます。
相続放棄の申述に至った経緯や状況、申述人の意向などを
家庭裁判所が確認するための書類です。
照会書で調査される内容は主に以下のようなものです。
・いつ相続の開始を知ったのか
・どのようにして相続の開始を知ったのか
・相続放棄をすることでどうなるかを正しく理解しているか
・自分の意思で相続放棄の申述をしたのか
・本当に相続放棄をしても構わないか
こちらもあまり難しく考える必要はありませんが、
場合によっては「いつ相続の開始を知ったのか」は重要になるので
慎重に回答するようにしましょう。
相続放棄は「相続の開始を知って3ヶ月以内」と決められているため、
期限を過ぎている場合や、過ぎてしまった理由をしっかり説明できないと
相続放棄の申述を受理してもらえない可能性があるからです。
照会書に回答を記載したら、家庭裁判所へ返送してください。
相続放棄申述受理通知書が届く
照会書を返送すると、特に問題がなければ受理されます。
申述が受理されると家庭裁判所から「相続放棄申述受理通知書」が届きます。
この書類が届いたということは相続放棄手続きが完了したことになります。
相続放棄申述受理証明書の発行も可能
被相続人の借金の債権者から返済を催促されても、
「相続放棄申述受理通知書」を見せると催促をやめてもらえるようになります。
しかし、債権者によっては証明書を求めるケースがあります。
その場合は「相続放棄申述受理証明書」を発行してもらい、債権者に提出しましょう。
相続放棄申述受理証明書は家庭裁判所で発行できます。
自身の相続放棄後にその他の人が不動産を相続した場合にも、
登記手続きで必要になります。
相続放棄に関する注意点
相続放棄の申述には期限があります。
基本的に「自己のために相続開始があったことを知った時から3ヶ月以内」です。
この3か月を「熟慮期間」といいます。
熟慮期間を過ぎてしまうと、単純承認したものとみなされて
相続放棄の申述書類を提出しても受理されず、相続せざるを得なくなります。
ただし、相続開始を知ってから3ヶ月が経ってしまった後でも、
理由によっては相続放棄の申述が受理される可能性もあります。
3ヶ月後に多額の借金が発覚するケースなどもよくあります。
こうした特別な事情がある場合は諦めずに弁護士や司法書士などの
相続に強い専門家に相談するのがオススメです。
また、冒頭にもお伝えしましたが、相続放棄は
プラスの財産もマイナスの財産もすべて放棄することになります。
先ほどとは逆に、相続放棄後に大きな財産が見つかる場合もあります。
相続放棄を検討する際は、プラスとマイナスの財産を
余すことなくすべて調査し把握することが重要です。
3ヶ月以内に洗い出す必要があるのでのんびりしていられません。
最近はインターネットに隠れた「デジタル資産」などもあり、
財産調査に関して複雑化しています。
確実にスピーディーに調査したいのであれば、
こちらも相続に強い専門家に相談しましょう。
相続放棄をするべきか、否か。
しっかり見極めて、適切な判断をしていきましょう。
(東京司法書士会所属|登録番号:7237 認定番号:501362)
司法書士。相続案件、会社法務、債務整理、簡裁訴訟代理などを中心とした業務を担当。